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経営目線の装備

Coach's VIEW 2020年11月 5日

鈴木義幸

鈴木義幸

株式会社コーチ・エィ 代表取締役

「『経営目線』をもった人材を開発するのが難しい」

経営者からたびたび聞くお話です。

日本企業の多くは、「オペレーショナル・エクセレンス」を追求してきました。一つひとつのサービス、ものづくり、事務作業を徹底的に、パーフェクトにやる。

それはもう、日本人に宿った習性のようなものです。

「経営目線をもつ」とは

「オペレーショナル・エクセレンス」は、日本企業の大きな強みです。しかし、それを追求すればするほど、目線は「目の前」に向かいます。そして、目線が「目の前」に固定されれば、経営目線は持ちにくくなります。

さて、そもそも、経営目線とは何か。

いろいろな考え方があると思いますが、私は、下の3つを兼ね備えていると、経営目線を持っていると言えるのではないかと考えています。

短期だけでなく、中長期的にものを観る力。
部分だけでなく、全体を観る力。
表面だけでなく、本質を観る力。
「短期的に、部分を、表面的に観る」人に経営目線があるとは、誰も思いません。「中長期的に、全体を、本質を捉えて観る」ことができる人に、経営目線の存在を感じます。

では、いかにして、部下に経営目線を装備させていくことができるのか。

経営企画部門に配属する、全社的なプロジェクトに参加させる、社長の「カバン持ち」をさせる...。

これらは、いわゆる「オポチュニティを与える」という開発手段です。

経営目線開発のためにオポチュニティを創り出すのは、とても有効なプランです。ただ、オポチュニティはそう次々に、また今日明日で創れるものではありません。

何か日常的にできることはないでしょうか?

日常でできる、経営目線の開発とは

23年間、エグゼクティブコーチングを実施し、多くの経営者、経営者候補とやり取りした経験から、一つ明確に提案できることがあります。

それは、「変化について問う」ことです。

「あなたは会社の何を変えたいですか?」と問う。いや、問い続ける。

とてもシンプルな問いですが、隙を見つけてはこのことを相手に問う。

なぜこの質問をすることが、相手の「経営目線の装備」に役立つのか?

まず、この質問に対して答えるためには、過去を振り返り、現状を把握し、そして未来を展望する必要があります。

そうしないと、本当の意味でこの質問に答えることはできない。

ですから、この質問を繰り返し問われると、頭の中にいわゆる「タイムライン」が生まれ、中長期的にものを観る習慣が備わります。

脳の配線を変えるような作業と言っても過言ではありません。

次に、「あなたは"会社の何を"」と問うていますから、どうしても全体について考えざるを得ません。

あるコングロマリット企業では、30人を超える役員全員に弊社のコーチがついています。役員全員が「経営目線をもつ」はプロジェクトの大きなテーマです。

先日、このプロジェクトを先導した副社長が話してくれました。

「経営会議で、ある役員が『予算はうちも喉から手が出るほど欲しい。が、まずは、あちらの事業部に使ってもらいましょう。全社のことを考えたら、割り振った方がいい』そう言うんですね。他の部門に予算を譲るという視点はこれまではなかった。セルフィッシュじゃないその発言が、とても嬉しかった」と。

何を対象に問いかけるかは、相手の目線を変える上でとても大事な要素となります。

そして、最後に、この質問に対して答えるには、「何に向けて(何のために)変えるのか」について意識せざるをえません。

「何に向けて」がなければ、変化のイメージを描きようがないからです。

そして、「何に向けて」の部分として意識したいのは、「パーパス」(目的)です。

企業の「存在目的」に合致した形で変化を考えてもらう。

つまり、「あなたは、会社の何を変えたいですか?」という問いに、本気で向き会えば、「何のためにこの会社は存在しているのか?」という「本質」に対峙せざるをえなくなります。

表面だけを見ていては対応できない類の問いなのです。

金融CEOがコーチをつけ続ける理由

ある金融のCEOをコーチして3年になりますが、セッションの度に「あなたは、会社の何を変えたいですか?」と問いかけています。

これまでのセッション数は40回以上になりますから、最低でも40回はこの質問に対峙していただいていることになります。

先だって、「なぜ、コーチングを継続的に受け続けているのですか?」と伺いました。

CEOは、「コーチをつけ始めてから、なぜこの会社は存在しているのか?社会にとってどんな価値を提供する存在なのか?そうした本質的なことを日々考えるようになりました。それは経営に大きく活かされています」とおっしゃってくださいました。

問うているのは「変化」であって、「本質」を直接扱ったわけではないのですが。

「あなたは、会社の何を変えたいですか?」

ぜひ、部下に経営目線を持ってもらうために、本気で問いかけてみてください。

何度も何度も、繰り返し。

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この記事の著者

鈴木義幸

鈴木義幸

株式会社コーチ・エィ 代表取締役

慶應義塾大学文学部人間関係学科社会学専攻卒業。株式会社マッキャンエリクソン博報堂(現株式会社マッキャンエリクソン)に勤務後、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後、有限会社コーチ・トゥエンティワン(のち株式会社化)の設立に携わる。2001年、法人事業部の分社化による株式会社コーチ・エィ設立と同時に、取締役副社長に就任。2007年1月、取締役社長就任。2018年1月より現職。