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経営チームを「チーム」にする

Coach's VIEW 2021年2月 3日

鈴木義幸

鈴木義幸

株式会社コーチ・エィ 代表取締役

「チームにする」とはどういうことか?

ひとつの解釈は、そこに集うメンバーが「共創」をしているということではないかと考えます。

共創とは、簡単に言えば、全体が部分の総和以上になっているということ。1+1+1が3よりも大きくなっているとういうことです。

メンバーが相互に作用、影響しあい、集まって協力し合っていることによって価値を生み出している。

それが、「チーム」である状態。

チームというものをそのように解釈したときに、最もチームにするのが難しいチームが、「経営チーム」ではないかと思います。なぜならば、経営チームというのは、4番ピッチャーの集まりのようなものだからです。

多くの場合、役員はその企業で実績を上げた人であり、競争を勝ち抜いた人です。従業員10万人を抱える大企業のCEOに、ある時聞かれました。

「鈴木さん、うちの会社で執行役員になれる確率ってどのくらいか知ってる?」
「いえ、まったく見当がつきません。」
「0.2%だよ。」

1000人に2人しか役員になれないわけです。

そうして選ばれてきた人たちですから、自分のやってきたことに自信もあり、哲学もある。簡単に周りの意見に賛同したり、なびいたりはしません。たとえ、相手が社長であったとしても。

ですから、本当の意味で「チーム」になるのは難しいわけです。

喉から手が出るほど良い経営チームが欲しい

エグゼクティブ・コーチングを長くやらせていただいている中で、社長のコーチングには大きく次の3つのテーマがあると感じます。

一つは「イノベーションが起こる組織文化の形成」。もう一つは「後継者の開発」。そして、三つ目が「経営チームの醸成」です。

ある時、クライアントの社長がぼそっとつぶやかれた一言を、今でも鮮明に覚えています。

「実はさ、喉から手が出るほど、良い経営チームが欲しいんだよね。」

どうすれば経営チームは「チーム」になるのか? 

私の知る限り、その方法は、本にも、論文にも、MBAの教科書にも書いてありません。

ですから、我々はクライアントである経営者と「良い経営チーム」をつくるために何ができるのかを、一緒に探索し考えます。

パーパスについて話す

その経験から、読者のみなさんにひとつ提案できることがあるとすると、それは、経営チームで「パーパス」について話すことです。

「この会社の社会における存在意義は何なのか?」
「何のために、誰のために、この会社は世の中に存在しているのか?」

起業して間もない頃は、経営チームの意識はパーパスに強く向かっているものです。

「何を社会に価値として提供するのか」

そんな議論が、いつでもどこでも起きるような雰囲気があります。

ところが、会社が大きくなり、それこそ上場を目指すようになったりすると、年次決算、四半期決算、月次決算・・・とパーパスよりも「目標」に強く意識が向くようになります。いつまでにこれだけの業績を上げる必要がある。それぞれの部門を統括する役員に目標が落とし込まれ、各役員は、「自分の」目標を達成しようと懸命になる。

会社として「社会にどんな価値を提供するか」ということよりも、大事なのは自分の部門の目標の達成。「自分の」目標が強く意識されると、エゴが表面化し、他の役員とあまり建設的でないぶつかり合いや、時には足の引っ張り合いが起きます。

こうした状況の中では、経営チームは間違いなくチームになっていない。

しかし、パーパスを問い直すことによって、再び、経営チームはチームになることが可能です。

存在理由を問う

マイクロソフトのサティア・ナデラ氏は、若干陰りの見え始めたマイクロソフトを、再び力強い成長軌道に乗せ直したCEOです。

彼の著書『ヒット・リフレッシュ』の冒頭に以下のような記述があります。

「競争相手を遠く引き離して数年も疾走を続けると、何かが変わってきた。よい方向への変化ではない。革新的な仕事がお役所的な仕事に、共同作業が内部抗争に変わり、競争から落後し始めたのだ。」

「こうした困難な時期のさなか、ある風刺画家が、マイクロソフトの組織図を、いがみ合っているギャングが銃を向け合っている姿として描いた。このメッセージをないがしろにできなかった。」(※)

彼がまず行ったのは、役員に対して、「そもそもマイクロソフトは何のためにこの世に存在しているのか」と問いかけることでした。

ナデラ氏は言います、「会社を発展へと導いていくためには、私自身の心の中で、そして最終的にはマイクロソフトの全社員の心の中で、次の問いにはっきりとした答えを出す必要があることに気づいていた。

『マイクロソフトの存在理由は何か?この新たな役職での私の存在理由は何か?』」(※)

パーパスを経営チームの中でとことん議論したことで、マイクロソフトの経営チームは再びチームになりました。そして、それが、マイクロソフトが復活を遂げる大きな要因となったのです。

経営チームが「チーム」になるために、パーパスを問い直すことを支援する。

コーチ・エィのエグゼクティブコーチの大きなミッションのひとつだと思っています。

関連情報

コーチ・エィの『エグゼクティブ・コーチング』

この記事の著者

鈴木義幸

鈴木義幸

株式会社コーチ・エィ 代表取締役

慶應義塾大学文学部人間関係学科社会学専攻卒業。株式会社マッキャンエリクソン博報堂(現株式会社マッキャンエリクソン)に勤務後、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後、有限会社コーチ・トゥエンティワン(のち株式会社化)の設立に携わる。2001年、法人事業部の分社化による株式会社コーチ・エィ設立と同時に、取締役副社長に就任。2007年1月、取締役社長就任。2018年1月より現職。