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変化の時代こそ「パーパス」について語り合う

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今、身近に起きている「変化疲れ」

あなたやあなたの周りに「変化疲れ」は起きていないでしょうか。

社長のエグゼクティブ・コーチングの一環で、幹部や管理職の方にインタビューをさせていただく機会があります。新しい社長が就任したある企業にインタビューをさせていただいたときのことです。インタビューに応じてくれた方々は、どの方も会社のことが大好きで、ご自身の武勇伝をイキイキとした表情で話してくれました。

しかし、社長のことや新しい経営方針について話が及ぶと、表情は固くなり、それまでの話す勢いが失われていきました。

聞いているうちに明らかになったのは、その会社では、数年に一度、親会社から社長が送り込まれてくるたびに新しい経営方針が打ち出されること。そして、幹部以下のプロパーの社員たちは、社長就任とともに繰り返される方針転換に疲れている、ということでした。

社員たちは「新しく来た社長は必ず『今が変わらなければならない時だ!』と新しい経営方針を打ち出す。でも、どうせ数年したら新しい社長が来て、また新しいことを始めるに違いない」と思っていました。

変化にはエネルギーが必要である

このように、新しいことへのチャレンジ以前に、繰り返される変化に疲弊しているケースは、意外と珍しいことではないのかもしれません。

変化とは、ある状態・位置から、他の状態・位置に変わることを意味します。一般的に、物質が活性化したり、化学反応を起こしたりするためには、エネルギーが必要です。同じように、人や組織が活性化・変化する際にもエネルギーが必要なことを、我々は経験的に知っています。

現在の我々を取り巻く環境に目を向けると、目覚ましい技術革新や情報量の飛躍的な増加など、変化を求められる度合いは日に日に増しています。更に、昨年からの新型コロナウィルスの流行は、働き方や仕事観といった価値基準にも大きな変化をもたらし、人々の生活様式やビジネス環境は、非連続な変化を余儀なくされています。

つまり、ここに来て、変化疲れが急速に広がっているのかもしれません。

パーパスを示すリーダーと変化を推進するリーダー

現在、世界で同時に起きている大きな変化に対して、リーダーたちは対応を迫られています。新しいことを取り入れたり、これまでとは別のやり方に舵をきったりするなど、絶えず何かを変えることに必死になっています。

日々変化し続けることを求められる中で、リーダーは何を期待されているのでしょうか。

2020年秋にコーチング研究所が実施した調査によると、リーダーに期待することとして「組織のビジョンやパーパスを社員に語ること」が最も多く、回答者の約3割がその項目を選択しました。「変化疲れ」が蔓延する中、リーダーが組織のパーパスを語ることは、どのような意味があるのでしょうか。

以下は、「組織のパーパスを共有することに長けているリーダー」と「変化を推進することに長けているリーダー」に関するコーチング研究所の調査結果です。

「組織のパーパスを共有するリーダー」とは、新しい手法や方針を打ち出すことよりも、組織のパーパス、つまり存在意義について部下と対話することを優先しているリーダーです。また、「変化を促進するリーダー」とは、新しい手法や方針を積極的に打ち出すことを最優先し、組織のパーパスについてあまり部下と対話をしないリーダーです。

グラフは、「組織のパーパスを共有するリーダー」と「変化を推進するリーダー」、それぞれの部下の「自己効力感」と「主体的なアクション」を比較したものです。いずれについても「パーパスを共有するリーダー」の部下の方が、「変化を推進するリーダー」の部下よりも高い値を示しています。

新しい手法や方針は、たしかに現状の打開への期待につながります。しかし人は変化に晒され続けると、自分の仕事や行動の意味づけが揺らいでしまいます。たとえ変化する必要があると分かっていても、主体的に新しいアクションを起こすことは難しくなるのです。

そんな中、パーパスを共有することは、組織や自分たちの社会的存在意義について立ち返ることになります。パーパスが明確であれば、自分たちの仕事がいったい何につながっているのか、その意味づけをたやすくし、自己効力感にも繋がるでしょう。それは動機の源泉になるはずです。

つまり、リーダーがパーパスを共有することは、繰り返される変化やパラダイムシフトによって失われかけた自己効力感を取り戻し、変化に向けて主体的なアクションを増やすことに繋がると考えられます。

まずは、リーダー自身がパーパスを言葉にする

パーパス経営が注目される中、グローバル先進企業の様々なパーパスステートメントを目にすることが多くなってきました。いざ自分たちも組織のパーパスを発信しようとするも、どのように作れば良いのか、どのような言葉が適しているのかなど、その策定に頭を悩ませるかもしれません。

しかし、パーパス経営の目的は、体面の良い言葉を振りかざして誰かを説得することではありません。組織の社会的存在意義について、社会や顧客や社員といったステークホルダーと対話をすることです。

また、組織のパーパスとは、組織や個人の内面に潜在しているものです。組織のパーパスを定めることは、何かを新たに創り出すことではなく、自分たちの中にあるものを探索しながら再定義することです。

もし現時点で共有すべきパーパスが明文化されていなかったとしても、まずはリーダーが組織の存在意義を自分の言葉で表現し、それを間に置いて部下と話してみてはどうでしょう。変化が激しい時だからこそ、話す価値のあることだからです。

あなたが考える、あなたの組織の存在意義とは、何ですか?

(記事執筆:コーチング研究所 マネージャー 外村 一志)

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