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探索は「問い」によって始まる

探索は「問い」によって始まる
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先日、ある製造業で社内コーチのプロジェクトに取り組んでいる方から次のようなことを聞きました。

「最近、社内コーチが、マンネリ化してきている。
他部署の部下は普段関わりが無い人たちだから頑張ってやっているんだけど、
直属部下とは、コーチングセッションを延期してしまったり、
最初の頃よりも聞くことに集中できずに、気づいたらアドバイスしていることもある」

効果的なコーチングができていないコーチの関わりとは

次の資料は、インターナルコーチ(社内でのコーチング)において、
効果的なコーチングができていないコーチの特徴的な関わりについてのレポートです。

※SHとはステークホルダーのことで、社内コーチがコーチングをする対象を指します。
※ステークホルダーの個人の状態のスコアが変わらなかった社内コーチは、以下の関わりのスコアが下がっている。
・定期的なコーチング
・指示・アドバイスしないこと
・コーチングへの意欲
※ステークホルダーが直属部下以外だけでなく、直属部下であっても、下がった項目は共通している。

効果的なコーチングができていないコーチの関わり方は、コーチとステークホルダーの組合せは関係がなく、共通していることがわかります。

  1. 定期的にコーチングを実施しない
  2. 指示・アドバイスをする
  3. 前向きにコーチングに取り組んでいない

この3つの項目はそれぞれがお互いに関連しているように見えます。

コーチングの最大の特徴は「問い」にあります。「問い」ではなく「指示・アドバイス」に頼ってしまうと、効果的なコーチングができなくなり、その結果、コーチングに前向きに取り組めず、定期的なコーチングもしなくなる、という現象が起こっているのではないでしょうか。

「社内コーチ」がマンネリ化し、効果的に行われない原因の一つは、「問い」がうまく使われていないことにあるのではないかと思います。

「問い」の目的とは?

では、「問い」とは何なのでしょうか?

「問い」を辞書で引いてみると次のようにあります。(大辞林)

「問い」
・問うこと。尋ねること。質問。
・問題。設問。

さらに、「質問」を引いてみると

「質問」
・疑問点やわからない点を問いただすこと。

とあります。

私は以前、中学校で社会科、歴史を教えていました。今考えてみれば、私にとって「問い」と「質問」には区別はなく、「問い」も「質問」もひたすら「正解」を求めるものでした。学校での教育にはほとんどの場合に「正解」が用意されていると言ってもいいでしょう。

テレビのクイズ番組も、すべての「問い」に「正解」があります。

ニュアンスの差こそあれ「問い」「質問」の目的は「正解」を求めるもの、として私たちは捉えているのです。

探索するための「問い」

それでは、社内コーチの目的は何でしょうか?

私たちが日々接している仕事、業務には、「決まったやり方」や「正解」があるものと、
一つの正解があるわけではなく、やり方や解決策が人の「主観」によって左右されるものが存在します。

社内コーチで「決まったやり方」や「正解」を見つけることを目的にすると、「正解」にたどり着いた瞬間に話すことが無くなります。

「そのプロジェクトはいつまでに完了させる?」
「そのお客様への提案の内容は?」
「プロジェクトを成功させるために最初にやることは?」

これらの問いに答えを出すことはとても大切なことなのですが、せっかくの社内コーチの時間を、業務のやり方を話したり、正解のために使うのは、もったいない。それは社内コーチ以外の時間で、業務の延長として話せることなのだと思います。

社内コーチの目的の一つは、探索的に話すことにあります。

では、探索的とはどういうことか。

蟻は最初から甘い蜜のある場所を知っているわけではありません。
あちらを歩き、こちらを歩き、たまたまそこにある甘い蜜を見つける。

私たちは自分の「知らないこと」に興味や関心を持つ傾向があります。知らないから知りたいと思うのです。ところが「知っている」「わかった」「理解した」と思った瞬間に、興味、関心の度合いは一気に低下してしまいます。しかし、蜜は今日も同じ場所にあるとは限りません。「知っている」を一度解除して、さらに探索を始めることが大切なのです。

社内コーチの目的は、探索的に話すことで、何かを見つけ出すこと。

最初から決められている正解や、すでにある答えに誘導するのではなく、今までにない何かを見つけ出す。教科書的、一般論的な「正解」ではなく、その人の「主観」に基づいた、その人なりの答えを探索する。

正解を求めるための問いではなく、探索するための「問い」。
「主観」を大切に、自分の思っていることを自由に話せるような「問い」。
正しいか間違っているか、この場にふさわしい内容かどうか、そのような二極化を脇に置いて、自分の思っていることを話すことのできる「問い」。
時間内には結論までたどり着かないかもしれないが、探索していることが楽しいと思えるような「問い」。
そのような「問い」を考えることが、社内コーチを成功させるために大切なことなのだと思うのです。

探索は「問い」によって始まります。
あなたは、「探索」するためにどのような「問い」を準備しますか?

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