ブログBlog

組織コーチングの未来

Coach's VIEW 2020年11月 6日

栗本渉

栗本渉

株式会社コーチ・エィ 副社長 執行役員
国際コーチング連盟マスター認定コーチ
一般財団法人 生涯学習開発財団認定マスターコーチ

コーチという職業に携わる者の原則を定める、国際コーチング連盟(International Coaching Federation:ICF)のコア・コンピテンシーが、およそ25年ぶりに改定されました。(※1)

時代の要求に合わせてコーチングのあり方が変化し、必然的にコーチに求められることも変化してきていることが背景にありそうです。

今日は、今回の改定が示唆する点を考察しながら、コーチングの未来の可能性を検討してみたいと思います。

25年間に起こった大きな変化

まず、これまでのコア・コンピテンシーを振り返ります。

これまでのコア・コンピテンシーは、25年前、「コーチング」という職業分野を確立する段階で、下記の点を強調しながら誕生しました。

  • 各々のクライアントの成功に、コーチとしてどう貢献できるか
  • そのために、コーチとしてどのような技能を習得すべきか

こうして、世の中に新たな専門領域を定着させることに貢献し、その後、25年の間に、コーチングは世界的に活用され始めました。

2018年のICFの世界調査によると、今後5年で、マネジャーの職務要件としてコーチとしての役割が加わるとする組織は、83%に上ります(※2)。

こうして、今後ますますコーチングは組織の中に深く浸透していくと考えられます。

ここで意識したい点は「コーチングが組織の中で使われる」という新たな文脈の登場です。

組織は、それ自体が、環境変化に伴って複雑に変化し続ける、それ固有の文脈を持つ存在と考えられます。組織においてコーチングが使われる場合、コーチには、個人に対する実践とは異なる、組織の視点、複雑で絶え間ない変化の視点を求められることが想像できます。

そして、今回のコア・コンピテンシーの改定は、こうしたコーチングの組織活用を視野に入れ、新たな視点を取り入れる試みをしているように読み取ることができます。

下記に、私が読み取った、今回の改定で意識されている3つの視点を紹介します。

これから組織にコーチングを導入される方、また、組織でコーチングを実践する方の指針になれば幸いです。

コア・コンピテンシー改定から読み取れる3つの視点

①全体システムの視点

個人の成功だけに焦点を当てても、個人の成功は実現しない。
個人は、取り巻く環境の一部であり、環境と関わり合う存在である。

②マインドセットの視点

コーチは全体システムの一部であり、相手に影響する存在である。
相手をコーチする前提として、まずはコーチ自身のマインドが問われている。

③パートナーシップの視点

コーチする者・受ける者という関係から脱却し、共に創りだす関係へ。
コーチングの方向性は、逐次で双方向の対話を通じ、両者の間に創出される。

これらの視点は、私たちのような組織に対するコーチングを専門とする者が、日々の実践の中で、その重要性を強く感じ始めてきている点と符合します。

思い返すと、5年ほど前に、既にこの兆しがありました。

当時、北米のコーチ仲間と、現地のコーチングトレンドについて情報交換した際に「全体システムの視点」を示唆する意見がありました。

「これまで、業界の中で、問題のある個人にコーチをつけ、その個人の矯正を試みる動きがあったし、今もまだ続いている。経験上、このアプローチは、有効に機能していない。また、次の問題児が現れ続けるからだ。

ある個人に問題を帰属させる前提は、適切なのだろうか。全体システムの歪みが、ある個人に表出している、そう理解できないだろうか?

その時、我々のコーチングはどう変わるのだろうか?」

コーチも変化の一部である

この数年間、こうした全体システムへの視点が組織へのコーチングに要求されることを感じ、私たちは、次世代に向けた組織へのコーチングのアプローチとして、システミック・コーチング™の開発を続けてきました。

システミックとは、「全体システムに働きかけること」を意味し、プラン通りに組織化されることを意味する「システマティック」とは異なります。

コーチ・エィのシステミック・コーチング™では、まずコーチたちがチームを組み、チーム内でコーチ同士がコーチし合います。

これは、コーチする相手をコーチング対象として観る評価者的なマインドセットを越え、自らも全体システムの一部として、全体変化に影響していることを自覚する、また自らが変化し挑戦し続ける主体であり続けるための核心となります。私たちが起こす変化は、決して「クライアントやクライアント組織の変化」ではなく、コーチである私たちも含めた全体の変化だからです。

そして、クライアント側にもチームを組むことを要望します。その組織のなかの「一人」がコーチを受けるという構造を越え、全体の目的に関与する人たちをコーチング・プロジェクトへの参加に誘っていくのです。

これら、コーチのチームとクライアントのチームは、全体の目的に向けパートナーシップを組んで協働し、探索的に前進するプロセスを共に創り出します。

こうして、変わり続ける組織に対して、共に変わり続けるチームとして、

  1. ①全体システムの視点
  2. ②マインドセットの視点
  3. ③パートナーシップの視点

を持ち込んで、コーチングを試みています。

組織コーチングの未来が、まさに扉を開け始めています。

本日の考察が、変化し続ける組織でコーチングを活用するみなさまにとって、ひとつの観点になれば幸いです。

関連情報

【コーチ・エィ フォーラム(10/30)】組織開発になぜコーチングが有効なのか?

この記事の著者

栗本渉

栗本渉

株式会社コーチ・エィ 副社長 執行役員
国際コーチング連盟マスター認定コーチ
一般財団法人 生涯学習開発財団認定マスターコーチ

前職では、経営戦略・人材開発部門に所属し、経営者とともに、経営人材の発掘から育成に関する全体戦略の立案、実現プロセスの構築、そのオペレーションまでを手がけた。また、エンジニアリング部門に転身後は、次世代技術の研究・開発から、業務改革プロジェクトのコンサルテーション、設計・開発、プロジェクトマネジメントまで、幅広く経験。コーチ・エィ入社後は、企業変革を推進するプロジェクトの企画から実施までトータルに携わっている。